障害者雇用はデメリットばかり?本当のところを解説します
障害者雇用での転職を検討している方の中には、このようにお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
障害者雇用は給与も下がるし、大したメリットがないと聞いたけど…実際のところ、どうなの?
この記事では、障害者雇用は本当にデメリットばかりなのか?メリットはあるのか?実際に勤務している人たちのデータも見ながら解説していきます。
✔️この記事でわかること
・障害者雇用のデメリットって?逆にメリットはあるの?
・一般雇用の場合のデメリット、メリットは?
・障害者雇用に向いているのはどんな人?
キャリアアドバイザー歴10年のくまくんがガイドします!
障害者雇用と一般雇用の違い
簡単にまとめると、こんな違いがありますよ!
障害者雇用 | 一般雇用 | |
障害に対する配慮 | ◎ | × |
就職の難易度 | ◯ | △ |
入社後の定着率 | ◯ | △ |
職種の幅 | △ | ◎ |
働き方の幅 | ◯ | × |
では早速、実際のデメリットとメリットを見ていきましょう。
障害者雇用のデメリットにまつわる疑問
求人数自体が少ない?
障害者雇用の求人数は、一般雇用の求人数より少ないです。現在、障害者雇用が義務付けられるのは「従業員43.5人以上の企業」が対象で、全ての企業が障害者雇用枠を設けているわけではないからです。
また、障害者雇用を積極的に実施しているのは規模の大きな企業になるため、大都市圏での求人が多く、地方都市では募集が少ないのも事実です。これは地方都市に住んでいる求職者にとっては、大きなデメリットと言えるでしょう。
一方、求人に対する倍率は一般雇用とあまり違いがありません。障害者雇用の場合、求人の数は少なくなりますが、応募者の数も一般雇用と比較すると少ないからです。
正社員雇用率が低い?
2018年に厚生労働省が実施した「障害者雇用実態調査」によると、正社員で勤務している方の割合は以下の通りです。
無期契約の正社員の割合 | |
身体障害 | 49.3% |
精神障害 | 25.0% |
発達障害 | 21.7% |
知的障害 | 18.4% |
2021年に総務省が実施した調査によると、役員を除く一般雇用者のうち、正規雇用者の割合は63.1%、非正規雇用者の割合は36.9%となっており、一般雇用の場合には、およそ6割の人が正社員で勤務していることがわかります。それと比較すると、障害者雇用の場合、確かに「正社員雇用率が低い」と言えるでしょう。
では、なぜ障害者雇用の場合、正社員での雇用率が低くなっているのでしょうか?
まず一つ挙げられるのは、お持ちの疾患によって、フルタイムで勤務できない人が一定数いるから、という理由です。その場合、時短勤務やパート・アルバイトで勤務を開始するケースが多くなり、必然的に正社員での勤務スタートが難しくなります。
また一般的に、障害者雇用で入社した方の定着率は、一般雇用で入社した方より低い傾向があります。そのため、新たな環境で安定就労ができるかをお互いに見極めるため、まずは契約社員として採用し、一定期間が経過したら正社員に登用する、という方針の企業が一定数存在しています。入社時の採用条件としては「契約社員からスタート」という求人が多いのです。
正社員スタートの求人が少ないのは事実ですが、体調を安定させて継続勤務ができていれば、正社員登用される人もたくさんいます。
正社員登用の条件は企業により様々です。実は企業によっては、「1年後にはほぼ100%の人が正社員化している」というケースもあります。登用の条件については選考の中で直接企業に確認するか、キャリアアドバイザーを通して聞いてもらうと良いでしょう。
パートやアルバイト、契約社員スタートであっても、社会保険は完備されている企業が殆どです。正社員の場合と勤務条件が変わらない企業もあるので、まずは勤務条件を確認してみると良いですね!
給与が低い?
前述の「障害者雇用実態調査」によると、身体障害があり、正社員雇用の方の平均年収は258万円となっています。日本の給与所得者全体の平均年収が約440万円ということを考えると、確かに障害者雇用の場合、一般雇用より給与が低くなる可能性が高いと言えます。
なぜこのような年収になるかと言うと、障害者雇用の場合、前述の通り正社員として勤務している人の割合が少なくなること、また非正規雇用者の中にはフルタイム勤務をしていない人が多く、管理職に就いている人も少ない傾向があるためです。
一方で、障害者雇用で入社した人の中にも、長く安定して勤務ができている人や、責任の重い仕事を任されている人の場合、一般雇用の場合と同等か、あるいはそれ以上の給与を得ている人もいます。
単に数字だけを見れば障害者雇用の給与は一般雇用と比較すると安いと言えますが、障害によって働き方に制約があり、責任の重い仕事を避けたい人がいたり、体調に不安があって時短労働をしている人が多いことが大きな理由となるため、一般雇用と比較して不当に給与が低いわけではないと考えて良いでしょう。
職種の幅が狭い?難しい仕事はさせてもらえない?
結論から言うと、これはケースバイケースです。
確かに障害者雇用の場合、一般雇用と比較すると、管理職の求人や専門職の求人は少ない傾向があります。また、そもそも一般雇用でも募集が少ない専門的な仕事の場合、その中からさらに障害者雇用枠で募集がかかるのはタイミング次第、というケースもあります。
なぜこういったポジションの求人が少ないかと言うと、難易度が高く責任の重い仕事で負担感が増え、体調を崩して勤務できなくなることを懸念する企業が多いためです。
また、障害者雇用で勤務する人の中には、キャリアアップよりも安定勤務を望み、あまり難しい仕事を希望しない人もいます。企業側としても、体調不良で休む人がいることを見越して、周囲でカバーし合える少なめの業務量をお任せする、という方針で障害者雇用を進めている企業もあります。
しかし、安定勤務ができており、あなた自身にもキャリアアップの意向がある場合には、一般雇用で入社した人と同じように仕事の幅を広げていけるケースも多々あるのが実情です。
入社後少しずつステップアップを狙うこともできますが、最初からハイクラス求人を見て転職したいという場合には、dodaチャレンジ、アットジーピー【atGP】など、ハイキャリア層に強い転職エージェントを利用すると良いでしょう。
周囲に障害について知られてしまうのでは?
企業の方針にもよりますが、障害者雇用の場合、周囲に「障害者雇用で入社している」と知られる可能性があります。
ご自身の障害についてオープンに話せる人もますが、知られたくない、話したくないという人もいるので、そういった人にとってはこの点はデメリットと言えるでしょう。
とはいえ、障害者雇用で入社する場合、入社前に「障害の開示範囲」を会社側と相談できるケースがほとんどです。ご自身の障害について「人事の担当と上司だけに知っておいてほしい」「同じ部署内の人には知っておいてほしい」など、要望を出すことができるのです。
しかし、例えば体調が悪化した時に通院のための休みを取りたい、業務負担に関して相談したいといった合理的配慮を得るため、「周囲が知ってくれている方が楽」というケースもあります。
同僚があなたの障害について何も知らない場合、「あの人ばかり休んだり業務量を調整してもらって、不公平だ」と思われる可能性もゼロではありません。そのため、障害について周囲に開示する方が働きやすいと感じる人もいます。
デメリットと言える点もあるが、理由がある
ここまで、障害者雇用のデメリットとしてよく語られるポイントについてまとめてみました。
単純に数字だけを見ると、障害者雇用は一般雇用と比較して条件が悪いように見えますが、背景には色々な理由があります。
障害者雇用の場合、一般雇用と比較して働き方も非常に多様なので、平均値を鵜呑みにするより、「自分が希望する働き方の場合、どのような条件になるのか」という観点で判断するのが良いですね。
障害者雇用のメリットって?
続いて、障害者雇用のメリットとして語られるポイントについても見てみましょう。
合理的配慮を得られる
合理的配慮とは、簡単に言うと「障害のある方にとっての日常生活や社会生活上での困難さを、周囲のサポートや環境調整によって軽減する」ための配慮のことです。
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
「障害者雇用促進法」では、障害を理由にした差別は禁止されており、企業側には、対応可能な範囲での合理的配慮の提供が義務付けられているのです。
そのため、勤務にあたり、あなたの症状や障害特性に合わせた個別の配慮を受けることが可能です。人によって求める合理的配慮の内容は異なるため、企業側と都度話し合いながら内容をすり合わせるのが一般的です。
一般雇用の場合、合理的配慮の提供は義務付けられているわけではないので、対応してもらえるかどうかはその職場次第ということになります。
合理的配慮の具体例や実施ステップについては、ぜひ以下の記事も参考にしてみてくださいね!
職場の理解を得やすい
合理的配慮と重なる部分もありますが、障害者雇用実績が豊富な企業の場合、すでに受け入れ体制が整っていたり、職場の理解がある可能性が高まります。企業によっては、専任の相談員が在籍していたり、職場の設備が整っていることもあります。
また、キャリアアドバイザーとしてのくまくんの経験上、責任感の強い人ほど、周囲に迷惑をかけたくないという気持ちが強く、一人でトラブルや悩み事を抱え込んで体調を崩してしまう傾向があるようです。
障害者雇用で入社することで周囲からの理解を得やすく、困りごとが発生した場合でも定期面談で誰かに相談ができるなど、一人で抱え込むことなく早期解決ができるのはメリットと言えるでしょう。
一般雇用より定着率が高い
少し前のデータになりますが、2017年に障害者職業総合センターが実施した調査によると、障害者のうち、就職から1年後の定着率は以下のとおりです。
1年後の定着率 | |
障害者求人 | 70.4% |
一般求人(障害開示) | 49.9% |
一般求人(障害非開示) | 30.8% |
障害を非開示にして入社した場合と比較すると、障害者雇用の場合の定着率は倍以上であることがわかります。
言い換えると、一般雇用で入社した場合、障害の公開状況にかかわらず、半数以上の人が1年経たないうちに離職してしまう、ということです。
短期離職を繰り返すほど、企業からの目線はどんどん厳しくなっていき、転職先を探すのが難しくなる傾向があります。障害者雇用で理解を得ながら長期の勤務実績を積んでいくと、次の転職がしやすくなり、将来的なキャリアの選択肢も広がる可能性がありますよ。
障害のことを隠して勤務していた方の中には、体調が悪くても無理して勤務を続けるしかなく、結果的にもっと体調が悪化してしまった…という方も結構いらっしゃるんです><
大企業の求人が多く安心感がある
現在、民間企業に求められている障害者雇用率は、2.3%です。規模が大きい企業ほど、たくさんの障害者雇用を実施していることになります。
また、この障害者雇用率は、2024年には2.5%、2026年には2.7%と段階的に引き上げ予定なので、今後ますます障害者雇用枠は増えていく見込みです。
特に転職エージェントで取り扱っている求人の場合、そのほとんどが大企業や一部上場企業の求人となります。そういった企業は福利厚生が充実していることも多く、長く安定的に働ける要素が揃っている点で魅力的だと言えるでしょう。
働き方の選択肢が豊富
前述の通り、障害者雇用の場合、正社員でスタートできる求人は一般雇用と比較して少なくなりますが、裏を返せば契約社員スタートであるがゆえに、フレキシブルに働き方の相談ができるとも言えます。
例えば週30時間程度の時短勤務からスタートして、慣れたらフルタイムにするなど、無理なく勤務を開始する相談も可能です。いきなりフルタイムで働くことに不安がある人にとっては、この点も大きなメリットになります。
一般雇用のメリットとデメリット
一般雇用で働く際のメリットは、「障害者雇用よりも求人数が多く、職種の選択肢も広い」「平均的な給与水準が障害者雇用より高い」「正社員スタートの求人が障害者雇用より多い」という点です。
一方で、「障害に対する合理的配慮を受けられない」「離職率が高い」「フレキシブルな働き方を受け入れてもらえるどうかは職場次第」と言う点はデメリットと言えます。
障害者雇用に向いている人、一般雇用に向いている人
ここまでご紹介してきた通り、障害者雇用にも一般雇用にも、それぞれのメリット、デメリットがあります。その上で、それぞれの雇用に向いているのはどのような人でしょうか?
以下の記事にまとめてみましたので、気になる方はぜひ読んでみてくださいね!
まとめ
最後にもう一度、障害者雇用と一般雇用を比較しておきましょう。
障害者雇用 | 一般雇用 | |
障害に対する配慮 | ◎ | × |
就職の難易度 | ◯ | △ |
入社後の定着率 | ◯ | △ |
職種の幅 | △ | ◎ |
働き方の幅 | ◯ | × |
障害者雇用にも、一般雇用にも、それぞれにメリット、デメリットがあります。どちらの方が向いているかは、あなたの希望や体調、求める条件次第です。
自分にどちらが向いているかわからない、まだ迷っている…という人は、まずは転職エージェントに相談してみると良いでしょう。
現在の勤務状況や体調も踏まえて、「その状況であれば、障害者雇用の方が安心して働けるかもしれません」「そのご希望であれば、一般雇用で探す方が選択肢が広くなりますよ」など、あなたの状況に合わせたアドバイスをもらえるはずです。
障害者雇用は、決してデメリットばかりではありません!制度をうまく活用して、ストレスなく安定勤務できると良いですね★